2012年2月の東大入試(世界史)を解いてみた。

 代々木ゼミナールの広告(読売新聞2/28(26面))に東大の入試問題と解答例が出ていたので、ちょっと見てみました。

第一問
 ヨーロッパ列強により植民地化されたアジア・アフリカの諸地域では、20世紀にはいると民族主義国民主義)の運動が高まり、第一次世界大戦後、ついで第二次世界大戦後に、その多くが独立を達成する。しかしその後も旧宗主国(旧植民地本国)への経済的従属や、同化政策のもたらした旧宗主国との文化的結びつき、また旧植民地からの移民増加による旧宗主国内の社会問題など、植民地主義の遺産は、現在まで長い影を落としている。植民地独立の過程とその後の展開は、ヨーロッパ諸国それぞれの植民地政策の差異に加えて、社会主義や宗教運動などの影響も受けつつ、地域により異なる様相を呈する。

 以上の点に留意し、地域ごとの差異を考えながら、アジア・アフリカにおける植民地独立の過程とその後の動向を論じなさい。解答は解答欄(イ)に18行以内で記し、必ず次の8つの語句を一度は用いて、その語句に下線を付しなさい。

カシミール紛争 ディエンビエンフー スエズ運河国有化 アルジェリア戦争 ワフド党 ドイモイ 非暴力・不服従 宗教的標章法(※)

(注)2004年3月にフランスで制定された法律。「宗教シンボル禁止法」とも呼ばれ、公立学校におけるムスリム女性のスカーフ着用禁止が、国際的な論議の対象になった。

 ふむぅ。課題語句は英領、仏領で、出題は両次の大戦と旧宗主国との相関に、社会主義や宗教運動かぁ。

 では、アタシの解答例。

一次大戦を画期とした民族主義運動は、印の非暴力・不服従運動や、埃ワフド党など国民的反英独立運動を展開させたが、二次大戦を経た後、印では宗教対立から印パに分かれた独立となり、今なお続くカシミール紛争を抱え込むこととなった。英間接統治下で独立していた埃王国もイスラム主義による動揺を見せ、クーデタによる共和制移行後は、1956年に実力行使でスエズ運河国有化を果たして英と決別し、アラブ社会主義を展開させた。戦後の独立運動は英領に留まらず、仏領印支では東西冷戦が絡んだ代理戦争の様相を呈し、仏は1954年のディエンビエンフーの戦いで中ソが支援するベトミンに敗れ撤退した。印支失陥は直ちに仏領アルジェリア独立運動に飛び火し、アルジェリア戦争は100万人の在住欧州人の権益を絡めて長期化し、1962年の独立承認まで続くこととなった。一方で、戦後の仏経済の労働力となっていたアルジェリア系仏人など、仏でのムスリムの浸透は伝統的なライシテを揺さぶり、宗教的標章法など社会問題化を見せた。仏撤退後のヴェトナムでは米の撤退とサイゴン陥落で1975年に戦争が終結。しかし、間も無く中越戦争に突入し、孤立感を深めたヴェトナムは1986年にドイモイ政策により社会主義市場経済に舵を切り、外交関係の改善を進めていくこととなった。(552文字)

 18行×30字の540字が適正値だが、数字は2桁で1マスとして概ねおっけー。
 印、埃、越、アルジェを単純に並べるのでなく、大枠としての時系列と、英領、仏領の差異などに留意した。代ゼミの解答例では現在までターゲットにおいているが、出題は「植民地独立の過程とその後の動向」なので、余り足を伸ばす必要も無いように思うのだがどうか。

 では、代ゼミの解答例を、、、転載したいが、そろそろ寝ないと嫁さんにどやされるので、また明日。えへへ。