こどもの日

さて、今日はこどもの日。
祝日法に曰く「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」日です。

元々は中近世に「男の子の節句」となっていた端午の節句に由来します。本当は旧暦5月5日なので、現行暦(グレゴリウス暦)での今日は端午の節句ではないのですが、明治期の新暦移行後も民間レベルでは5月5日が生きていたよーで、衆院の文化委員会では以下のように報告されています。
子供の日ないし兒童デーにつきましては、團体といたしましてはまず厚生省の兒童局企画課から、五月五日を子供の日に指定してほしいという要望がよごされております。それから鳥取縣の中等学校の教職員十二名から、五月五日を子供の日にしてほしい、それからこの前、東京都の保育連合会からは五月五日に子供の日をということでありましたが、今度全國保育連合会からは十一月十五日を子供の日にしてほしいという要望がよこされております。また個人といたしましては、二百十二名の人々から五月五日を子供の日に指定してほしいという投書がよこされております。(S23.4.13衆院文化委第5号より)」
まぁ、その辺りはアバウトにやっているようです。

その一方で、建国記念の日は紀元前660年1月1日を新暦換算して(しかも換算手法が明らかに誤って)いるのが、どうにも整合性を欠いているのですが、「アバウトにやっている」という点では首尾一貫しているとも言えます。

少し意外なのは、祝日法第2条の定義の「母に感謝する」が「こどもの日」の中に含まれていること。
これも審議過程で色々あったようです。参院文化委員会打合会(S23.2.19第2号)にこんな発言が出ています。
「厚生省の兒童局で從來民間の有志の方が、子供の日の問題についていろいろやつておることを御紹介申上げたいと思います。十數年以前から民間有志の間で、五月五日を兒童愛護デーということをやつて頂いております。それが最近二三年前から週間運動になりまして、五月五日を中心に一週間の週間運動として、兒童福祉週間、兒童愛護週間としてずつとやつております。今年は兒童福祉法の施行の最初の年でありますから、五月五日という日を男、女という關係でなく、子供の日と定めたらどうかという希望を持つておるのであります。週間運動のことでありますが、この五月の第二日曜日が御案内の通り國際的にマザーズ・デー、母の日ということになつております。今年は五月九日がその日に當りますが、五月五日にお決めになりますと、五月五日がその週間の始まりで、同じ週間内にマザーズ・デーも入るので、子供の日と母の日を中心にして週間運動をやる意味からも、五月五日を期して子供の日と定めて母の日と共に兒童福祉關係の次代を擔う國民全部が心がけなければならんというこの日を中心にされたらよいという希望を持つておりますが、いろいろ民間の方々にこういうことの御計畫があるので、そういう點も御紹介しておきまして、御審議の參考にしたいと思います。」

その一方で「母の日」「婦人の日」の祝日化についても議論があり、母を賛美することは軍国主義下での「生めよ殖やせよ」を想起させるとか、憲法で男女同権を明記する中で片方の性のみを祝日化するのはどうか、などあり、当初案に無かった「母に感謝する」が「こどもの日」の中に繰り入れられて落ち着いたよーで。

このことについて、参院の本会議では女性議員から「一つ不平なのはお母さんの日がないこと、女の私は思いますけれども、この子供の日、子供にお母さんは附きものです。お母さんがなければ、子供が立派にならないということを思つたときに、この子供の日には、お母さんの催しがくつ附いて來るだろう。くつ附かせずに置かないと私は信じております。こういうような氣持で、私はこのお祝の日を喜んで賛成する者でございます。」との発言が残っています。
戦後しばらくの再構築期は、本当にすったもんだあったようで興味深いです。

ああ、今日も国会図書館のサイトに時間を奪われた。
国会図書館の法令索引では、審議経過の議事録まで閲覧できます。すごいですね。とほほ。